アビドスバンド結成!
♪~~♬~~
「……ご清聴、ありがとうございました」
ピアノの音が止まり、ぺこりと頭を下げるヒナを、パチパチと拍手が出迎える。
「やーやーすごいねぇ、おじさん感動しちゃったよ~」
「はい♡ とっても綺麗な音色でした♡」
「練習したから」
軋む音を漏らす椅子から勢いよく飛び降りて、ホシノはヒナに近づいた。
「あのゲヘナで風紀委員長やりながらピアノの練習までしてたなんて、並大抵の努力じゃできないね。さすがヒナちゃんだ」
「私たちだけで聞くのがもったいないくらいでしたね」
「そんなに持ち上げないで……恥ずかしい」
頬を赤く染めるヒナだったが、ホシノは軽く背中を叩いて背筋を伸ばすように促す。
「そんなに謙遜しなくても、ヒナちゃんはすごいよ。……そうだ! 今度の砂祭りで演奏してよ。絶対盛り上がるよ~」
「私だけで演奏会? それはちょっと……」
「あ、でしたら皆でバンド組みませんか? 私一度ベース引いてみたかったんですよね」
「おお、いいねぇ。ヒナちゃんキーボードやってよ」
「ホシノ、ピアノとキーボードは違う」
「うへぇ!? そうなの? おじさん詳しくないからわかんないや」
「……でも二人が望むなら頑張ってみる」
小さく答えるヒナに、ホシノとハナコは笑みを零した。
「ん~~! ヒナちゃん良い子だぁ~。じゃあおじさんも何かやらないとね。う~ん何がいいかなぁ」
悩みながら椅子へ座るホシノ。弾力のある椅子がホシノを受け止めた。
「ベースとキーボードは決まりましたから、あとはボーカルとギターとドラムがいれば、体裁は整いますね」
「ホシノはドラムが良い」
「ヒナさん、その心は?」
「バンドならドラムが中心。ギターみたいに前に出ないけど、必須といっていい楽器だから」
「あ~おじさん細かい作業苦手なんだよね。スティックもって叩いたりするなら初心者でもいけそう」
「私以上の完璧超人が何か言ってる」
「ホシノさんならできますよ。もし失敗してもいいじゃないですか。お祭りなんですから」
「……うへへ、そうだね。コンクールやってるわけじゃないし、成功も失敗も楽しんでこそだね。これは一本取られたな」
「あとはギターとボーカル。どうする?」
「ん~ミヤコちゃんに頼んでみよっか。断られるかもしれないけど」
「ハナコ、再教育室で楽器できるのいる?」
「それでもいいですけど、ホシノさん、これ見てください」
ハナコの差し出したタブレットの動画を見て、ホシノは思い出したように手を叩く。
「うん? ……あ~あ~そうそう。そういえばそうだった。おじさんったらどうして忘れていたんだろうね。ここにベストな人材がいたじゃん」
「私は知らないけど……上手なの?」
「そこはおじさんが保証するよ~」
小首をかしげるヒナに、ホシノが親指を立てて頷いた。
「ギターとボーカル、その両方を高いレベルでできるのは中々いないよ~」
傍らの椅子を撫でながら、ホシノは質問を投げかけた。
「綺麗な声もあるけど、なにより文化祭で披露してくれたギターソロ! あの演奏をもう一度見たいね。だからさ、協力してよ
ねぇ、カズサちゃん?」